「いちから聞きたい放射線のほんとう」まえがき掲載2015/01/12

「いちから聞きたい放射線のほんとう いま知っておきたい22の話」が出版されたのは2014年3月。去年の今頃はまだまだ原稿の手直しをしていました。
まえがきの部分は、最初に書いたものがこの倍くらいの字数があって、削るのに苦労しました。Amazonの「なか見!検索」でも読めるのですが、未読の方にぜひご覧いただきたいので、ここに掲載します。




この本を手にとってくださったかたへ       小峰公子               

 私は福島県に生まれました。実家は郡山市というところにあります。
 3年前の3月11日、両親は東京にいて難を逃れたのは不幸中の幸いでしたが、やっと帰省した時のことは忘れられません。砕けて散らばった食器、絵や照明器具は床に落ち、本棚やタンスの戸は全開、給湯器の配管は外れて床には水溜まり。2階のタンスや本棚は全部倒れていました。地震の時、家中一体どんな音がしたのでしょう。郡山でもこれだけの惨状でした。
 その上、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きたのです。忘れたくても忘れることができない、容易には消えない傷を、福島だけでなく日本の多くの人が負ってしまいました。
 原発事故が報じられると、たちまちのうちに多くの情報が流れ、いろいろなデータが出てきては、様々に「解釈」され、それがよく理解されないままにどんどん拡がっていきました。放射線関係の情報には、これまで知らなかったたくさんのことが出てきて、誰だって戸惑ったに違いありません。英語の文法のように、音楽の楽典のように、放射線にも世界共通の基礎知識があるはずなのに、それを知らないまま、次々と難問をつきつけられたようでした。けれど私には頼れる友人がいました。物理学者の菊池誠さんに、わからないことをメールやチャットでとことん聞きました。科学苦手、基礎知識ゼロの私に、菊池さんは丁寧に答えてくれました。
 そのおかげで、いろいろな情報を目にした時、これは信用できるな、これはなにか誤解があるみたい、などとわかるようになってきました。危険なことを避けるために多くの情報を共有したいという気持ちは誰にでもあると思いますが、膨大な情報からどれが適切かを自分で判断でき、以前よりも科学的にものを考える習慣が身についたと感じる場面が多くなりました。そして、こんなにわかりやすい貴重なやりとりを私のPCだけに収めておくのはもったいない、これに加えて、女子のこころをぎゅうっとつかんで離さないおかざき真里さんのステキな絵の力もお借りできたら、科学に馴染みのない方にも手にとっていただける本ができるんじゃないか、と思ったのです。
 放射線や原発問題を取り巻く状況は厳しく、解決には長い時間がかかります。その中で、私たちも子どもたちも多くの情報を判断しながら暮らしていかなくてはなりません。この本が、溢れる情報からの自立のヒントとなり、少しでもみなさんの生活のお役に立てたら嬉しいです。

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