ラ・マシン目撃記その5〜La Princesse in Yokohama2009/04/22

ラ・マシン4/17-5
寒い中を今か今かと待っていること一時間近く。私の隣りには60歳代くらいのおばあちゃまがいらして、寒い中をじっと一眼を構えている。平日だしこのイヴェントを知らない人も多いらしく、一部の私みたいなラ・マシン・マニアの他は、地元の人か、通りがかりの観光客が集まっているようなくらいだった。警官が先ほど「500人くらい集まってます」と言っていたが、たった、それだけすか??も、もったいない‥‥。

クモは既に専用車両と一体化している。
左手から帽子にスーツのコメディアン風紳士が通訳を伴ってやってきて、ストーリーを語りだした。
「クモが寝ているので、これから90デシベルの音でまず起こしますが、うまくいかなかったら音楽で起こします。ドウナルコトヤラオタノシミニ」
とのことである。フェンスに群がる観客にこうやって情報を与え、あとは人々の「口伝」に任せるということか?

私のいるエリアはフェンスが一部取り払われる。
「こちらをクモが通りますから移動してください」ということなので、移動しなくてもいい一番端っこの最前列に移動。ここからなら至近距離で見られそうである。
ミュージシャンのチューニングが始まり、マシニスト達が現れた。象のときはまっ赤な中世風の衣装だったけれど、今回は白いミリタリー風の短い丈のジャケットに黒いパンツ。赤いコードが縫い付けてある。カッコイー!!
全員がぴしっとクモの周りに並んでから(私だけ大拍手‥‥みんなもしてよー)クモに乗り込む。ががががーーという音やぎぎっっぴいいいという大音響に続き、下手側の大きな筒からボンボンという音とともに火花が出る。
その音に驚いたクモが次第に脚を動かし始めた!!うう。すごい動き。
そしてあのU 字型水大砲から大量の水が吹き出すと、クモが完全に立ち上がり、その勇姿を見せつけた。歓声とどよめきが沸き起こる。クモは観客に向かって容赦なく口から水をぶっかける!!みんなカメラを慌てて守る。あ,脚が、目の真ん前に!!ひゃあ、ここのエリアに居たのは大正解!!いつのまにかクモの下に入っちゃったよ!!脚が私の後ろの方に振り下ろされる。マシニストは私達を睥睨するかのような無表情でマシンを操作している。無数に垂れ下がるケーブルが脈打つ。踏みつぶされるかと思った!!クモはどよめく観客のなかを悠々と闊歩して赤レンガ倉庫を回り込み、楽団を従えて去っていく。レンガの壁に映る巨大なクモ。こんなカッコいいもん、見たことありますか?みなさま。映画なかに入り込んだみたい。巨大生物パニック映画と違うのは、みんな逃げない、っていう点だ。みんな、こどもみたいに喜んでいる。

倉庫の裏では覚醒したクモが大暴れ、ぼうぼうと燃える炎に映し出されるクモはマシンとは思えない。この日は交通規制されていなかったので前の通りをクルマも通っていたんだけど、びっくりして停車して見物してる人もいた。何も知らないで遭遇したら、そりゃあ驚くでしょうねえ!!

ここまでで私はラ・マシンに完全にタマシイを打ち抜かれた。クモが歩き出してからというもの、ココロがワナワナと震えっぱなし。今回クモが来る、と最初に聴いた時には「なーんだ象じゃなくてがっかり‥‥」と思ったのだが、こ、これも負けず劣らずかそれ以上か、とにかくこのアーティスト達は自分たちのレベルを下げるようなこと、しないんだな。日本でやる制約もかなりあるだろうから、とタカをくくって誠に失礼しました‥‥。とにかくドエライ瞬間に立ち会ってしまった‥‥。観客を「当事者」と思わせるのもラ・マシンの手のうちなのでしょうが、まんまと、もうどこまでも乗っかりますよう。大音響で鳴り響く爆竹に送られて家に帰った。
明日はどうなるのか、もうドキドキだ。

ラ・マシン目撃記その3〜La Princesse in Yokohama2009/04/21

ラ・マシン4・17-3
クレーンで運ばれてきたクモのようす

ラ・マシン目撃記その2〜La Princesse in Yokohama2009/04/21

ラ・マシン4・17-2
クモは車上に移されて、台座となる部分との接合作業に入った。
折畳まれた骨みたいな脚。
造りものにありがちな、うそくさいチープなカンジが微塵もないのが、ラ・マシンの造形物の素晴しさだ。
強く、大きく、気品さえ漂わせている。

見物の人垣もいったんひいたので、私も昼ご飯を食べに赤レンガ倉庫のカフェへ。
前日迄は暖かかったのに、この日は冬に戻ったみたいに寒かった。厚着してきたけどそれでも体が冷えきっていた。
テラス席ならクモが見え放題だし。あったかいし。
サラダでランチ。赤ワインもね。へへへ。

今回は、音楽もマシンが動くところも残したかったので、ビデオ録りを主としていて、写真はあまり撮らなかった。
撮りたての映像をチェックしたり。

カフェを出てまたクモの真ん前に行って写真を撮っていると70歳くらいのおじいちゃんが話しかけてきた。
「これはなんだろうねえ。大砲かねえ。花火かねえ。」
と指すのは、クモを狙う二台のでっかいU時型の大砲。
グランパレの展示で見たのと同じものだ。
「これ、パリで見たときは、どばーんと大量に水が吹き出しましたよ。なんにも言わないでいきなり吹き出すから、前にいたひとみんなびしょにしょになったんですよ。でも花火かなあ?」(ネタバレはつまんないからね‥‥)
「ほー。おねえちゃん、パリでも見たのかい?」
などから、いろいろと話しがはずんでしまった。
おじいちゃん、このクモがやってきてからというものソワソワして毎日見物に来てるのだそうだ。今日からはいよいよ動きまわるというので昨夜は眠れずに5時起きして、朝6時には来て見ているのだと言う。
すごいなあ。おじいちゃんの心も惹き付ける、マシン。
おじいちゃんは埠頭や山下公園でのリハーサルも全部見てたらしい。
「あの車椅子のひとはね、山下公園で怪我しちゃったんだよ。口惜しそうだろ?」なんて働くスタッフの解説もしてくれた。
そう、私もあの車椅子のムッシューが気になっていた。
確かに自分が動けないのにいらついているみたい。

おじいちゃんと名前を教えっこして、山下公園のクモ偵察へ。
途中、警察官とも立ち話。
夕方迄動きはないらしい。

クモは氷川丸の右手の埠頭にいて、クレーンに釣られて舟に移動するところだった。
こちらはまるで見物人なし!!!
寒いからかなあ。

コンビニ入ったりしたあとに、赤レンガ倉庫倉庫に戻ってみたけど、まだ作業中。寒さがキビシくなってきた。
クモに一番近いカフェに入って白ワインをオーダー。
テラス席で見ていると、さっきおじいちゃんが話してた車椅子のムッシューが窓の外に近づいてきた。自分用の写真を撮ってる模様。目が合うと何気なーく私のトナリにぴた、と車椅子を止めて、そこからクモの写真を撮っていた。
わーん。つかの間だけど、なんか、一緒に見てるみたいじゃない?(バカですみません)
去る時に車椅子から振り返って、ラテンな視線を送られ、いきなりハートが燃えたぜ。さすがフランス人。

おかーさん、そんなアホウなこと言ってられない。
お会計を済ませて、またクモ最前列へ!!

続く!!

ラ・マシン目撃記その1〜La Princesse in Yokohama2009/04/21

ラ・マシン 4・17
3年前から心待ちにしていたラ・マシンのストーリーが始まったのは3月16日。山下公園から見えた、などの情報に心がザワザワして落ち着かない。
このパフォーマンス集団は、いつも情報をわざとリリースしないようで、ル・アーブルでやったときもリバプールでやったときも、内容等がわかったのは直前のようだった。町中のバスにフォークが刺さってたりクルマが針で縫い付けてあったり、そういうのは今回もあるのかなあ。この日はクモが漂着した、というイントロで、大きな動きはなかった模様。

17日の朝に家を出発。11時には会場となる赤レンガ倉庫に着く予定が、乗り換えをうっかり間違えたりして(ウワノソラだったもんで!)着いたら12時近く。駐車場入り口に交通規制の時間帯を書いた張り紙があり、警備のおじさんに、この時間帯にはパレードがあるってことですよね?と訊いたりして、リサーチリサーチ。クモの一匹は山下公園にいるけど、包んであるだけだよ、など教えてくれた。

そうこうするうちに音楽が聴こえてきた。うわあ。
なんだなんだー。赤レンガ倉庫の広場の向こう、クレーンででっかいモノを釣り上げているぞ。
もっとすごい人だかりかと思ったら、クレーン前のフェンスで囲ったところに人垣がぱらぱらできている程度、下手側のかぶりつき席を確保できた。

ミュージシャン達はミュージシャン用の空中ブースで生演奏している。下手側にドラマー、上手側には弦楽、管、ギターとベース、ハープなど。

クレーンの物体が白いトラックの上方に降ろされてきた。
クルマに物体が降ろされ、そのうちおおおお!白い煙が上がる。ワクワクして死にそうだ。こんな思いはいつぶりだ??
日本人の作業員さんとラ・マシンのスタッフがごちゃごちゃと一緒になっていたけど、日本人作業員がぞろぞろ引き上げていく。
さあ、ここからでしょー!!
ラ・マシンのスタッフが物体によじ上り梱包していた網やタイヤをはずして綱を切っていく。
彼らは、グレ−がかったブルーのジャケットを着用。背中にスリットがあり、後ろ見頃裾がポッケになっている。オシャレだ。

演出で、たぶん、わざと切りにくいようなのを使ってるんじゃないかとおもうんだけど、綱を解くのもじりじりと時間がかかっている。
「もっと一発で切れるナイフ使えばいいのによう」
などという見物のオジサンの声が聴こえたりして楽しい。
カーキ色の麻布みたいなのが外されると、
次にグリーンの布が現れたが、それも徐々に外されて、

イヨイヨデターーー!!!!
白いケムリのなかでついに姿を現したクモ。
かっけーーー!!!

高く高く吊り上げられるクモ。
無数のケーブルは、まるで血管のようにこのマシンを有機的に見せている。

以下続くっ!!