矢川澄子さんのこと2006/04/23

矢川さんの夢を見て今朝方目を覚ました。

4年前に他界してしまった作家、翻訳家、そして澁澤龍彦の
最初の妻、矢川澄子さん。
私がお会いするのは原マスミさんのライヴの打ち上げのとき
だけ、それは矢川さんが原さんと親しくていらっしゃるから
なわけで、ライブメンバーである私は一度ちょっとだけお話
ししたきりだ。
矢川さんにはヤングすぎる居酒屋で
いつも帽子をかぶっていらして
目が合うとそっと少女のように笑っていらした。

夢の中で私は何か大判の本を読んでいて
フランス語の造語を見つける。
「先端」とか「象徴」とかの意味を持つ言葉
(この辺は既に曖昧、きっとそんなのないだろう)と
「降る」というような言葉を合わせたものだ。
私はその言葉の成り立ちを矢川さんに伺いにいくのだ。
(夢とはいえかなりな厚かましさ。)
矢川さんは私の訪問の意味を知るとくるり、と背を向けて
ついていらっしゃい、と無言で促した。
とある建物に向かうと矢川さんは地下へと降りて行く。
そこはピアノや机があるが殺風景な部屋だった。
「仕事場ですか?」ときくと曖昧にうなづき、
「見せてごらんなさい。その本は持ってきたの?」
とおっしゃる。
「はい」
私は例の言葉を探すべく持ってきた本のページをめくる
のだが問題の箇所が探せない。
矢川さんは忍耐強くその様子を見ている。
表紙を見ると、違う。本が違う。
「あ、別の本持ってきてしまいました。」
私はしどろもどろだ。
「たしか、その言葉は・・・・」
と説明途中で目が覚めてしまった。

降る、はTomberじゃなかったようなんだけど。
不吉な感じはしなかったんだけど。
私の拙い脳味噌は何を見せようとしたんだろう。
ブラウスにニットのロングベストの後ろ姿、
本をめくる私の横に立った時に腕で感じた彼女の体温が、
妙に生々しかった。
帽子をかぶってない矢川さんだった。

矢川さんが亡くなったのは、新聞で知った。
自殺だった。
ユリイカの臨時増刊号でその時の様子を
もう少し詳細に知った。
後日、原マスミさんに会った時に
訊かずにはいられなかった。
矢川さんの死のことを。
「おれさ、矢川さんって自殺するような人だったんだって
びっくりしちゃったんだよね。
でも、若い時の写真見てさ、あ、この女が
矢川さんの中に入ってたのか、って思ったんだ」

目が覚めてから夢がふくらんだり細部が消えて行ったり
肋骨と腰がギシギシ痛むなかで
夢の後ろ姿をつかまえようとして
また目をつぶったがもう眠れなかった。

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_ La Compagnie A-n 's BLOG - 2006年04月26日 15時21分41秒

夢を見た。

女が立ったままうつ向いて泣いてる。
「Cに電話して!」と繰り返す。
……
ああ!ここから先は怖くて言えない!
でも、この話を公子さんや由佳に話すと笑われるんだろうなあ。

とにかく、抱えたくない悲しみが押し寄せる。
こういう日常に散らばった深い悲しみから、
人はどう立ち直るのだろう?

吉野ヶ里の甕棺の4割は子供のものだという。
幼い女の子のなきがらの小さな腕には、南の島で採れた貝のブレスレットがあった。

ぼんやりと深く考えてみる。
公子さんの夢日記に不思議な表現があった。

>「おれさ、矢川さんって自殺するような人だったんだって
>びっくりしちゃったんだよね。
>でも、若い時の写真見てさ、あ、この女が
>矢川さんの中に入ってたのか、って思ったんだ」

>目が覚めてから夢がふくらんだり細部が消えて行ったり
>肋骨と腰がギシギシ痛むなかで
>夢の後ろ姿をつかまえようとして
>また目をつぶったがもう眠れなかった。

詩人って怖いなあ。
ぽとりと答えが落ちてくる。